米中首脳電話協議:未来への不透明な道筋
2025年1月17日、習近平中国国家主席とドナルド・トランプ元米国合衆国大統領の間で行われた電話協議では、フェンタニル問題や貿易、台湾問題など、幅広いテーマが取り上げられ、両国の未来に向けた道筋が模索されるべきですが、先行きは不透明です。
・フェンタニル問題:両国の協力が鍵だが、、、まず注目すべきは、協議の中心テーマとなったフェンタニル問題です。トランプ氏は、米国国内でのフェンタニルの流通増加に対する懸念を強調し、この薬物が引き起こすオピオイド危機に対する迅速な対応を求めました。実際、最近のデータによると、フェンタニルによる死亡者数は急増しており、特に若年層に深刻な影響を与えています。この危機は、単に米国国内の問題にとどまらず、国際的な協力が求められる課題です。
習氏は、中国政府がフェンタニルの製造を厳しく取り締まる方針を示し、違法薬物の流通を防ぐための国際的な協力を強化する意向を表明しましたが、口だけの約束、実行されることはないでしょう。フェンタニル問題は、国境を越えた犯罪組織との闘いを含む複雑な課題であり、両国が共闘し、国際社会における責任ある行動が求められます。
・TikTok問題:国家安全保障と経済的利益の狭間次に、TikTok問題も協議の重要なトピックとなりました。トランプ氏は、米国でのTikTok禁止の可能性に言及し、中国の親会社であるバイトダンスが米国の事業を1月19日までに売却しなければならないという新しい法律を支持する最高裁の決定について議論しました。この問題は、国家安全保障の観点から重要視されており、米国国内でのデータ保護やプライバシーの懸念が背景にあります。
一方、習氏は、米国市場における中国企業の権利を守る重要性を訴え、双方の企業が公平に競争できる環境を築く必要があると強調しました。これは、米中間の経済関係における課題を浮き彫りにしており、両国の企業が互いに利益を享受できる状況を作り出すことが求められていますが、両者がこの問題に対しどのようにアプローチするのかの結論は出ないままに終わるでしょう。
・貿易摩擦の解消と新たな道筋さらに、貿易関係についても両者は意見を交わしました。トランプ氏は、中国からの輸入に60%の関税を課す計画を持っていることを明らかにしました。この措置は、中国の貿易慣行に対する反発の表れであり、米国の製造業を守るための手段として位置付けられています。一方で、習氏は貿易戦争が両国にとっての経済的影響をもたらし、最終的には消費者に悪影響を及ぼす可能性があることを指摘しました。このような状況下で、トランプ氏と習氏がどのように対話を進め、貿易摩擦を解消していくのかが注目されますが、双方が協力し合うイメージは湧いてきません。
・グローバルな課題に対する連携協議では、ウクライナや中東の問題についても意見交換が行われました。トランプ氏は、ウクライナ情勢の緊迫化に懸念を示し、国際的な安定を維持するための協力を求めました。習氏は、中国が国際社会の安定に貢献する意向を示し、両国が協力して解決策を模索することの重要性を強調しました。しかし、これも口だけで終わるでしょう。
・台湾問題:慎重な対応が求められる台湾問題についても、習氏は慎重な取り扱いの重要性を強調しました。アメリカの軍事的介入に対して強い懸念を示し、トランプ氏も台湾との関係を維持する必要性を認識しつつ、緊張の激化を避ける必要があると述べました。この問題は、両国間の歴史的な背景や地域の安定に深く関わっているため、慎重な対応が求められるところですが、中国は自国の利益だけを追求するでしょう。
ウイグル問題 タイと中国の関係:経済成長と人権問題の狭間で
タイと中国の関係は、近年ますます重要性を増しています。特に、経済的な結びつきや文化交流は、両国の外交政策において中心的な役割を果たしています。2025年には、両国の外交関係樹立50周年を迎えることを記念して、さまざまなイベントが開催される予定です。これにより、両国間の関係がさらに深まることが期待されています。
中国は、タイに対して多くのインフラプロジェクトへの投資を行っており、その一例が「一帯一路」構想に基づく大型プロジェクトです。この構想は、中国の経済圏を拡大することを目的としており、タイもその重要な一環として位置づけられています。具体的には、タイの鉄道網の整備や港湾の開発が進められており、これによりタイの経済成長が促進されることが見込まれています。
経済的な関係の強化は、貿易の拡大にも表れています。中国はタイの主要な貿易相手国であり、両国間の貿易額は年々増加しています。特に、観光産業において中国からの観光客が増加していることは、タイ経済にとって重要な収入源となっています。観光業は、タイにとっての重要な産業であり、経済成長を支える大きな要素の一つです。
しかし、この経済的な結びつきには、いくつかの懸念も伴います。それは、タイ国内での中国の影響力の増大です。経済的な利益を追求する中で、タイ政府は国の主権をどのように守るかという課題に直面しています。中国からの投資は経済成長を促進しますが、同時に中国政府の影響力が増すことへの警戒も必要です。このバランスを取ることが、今後のタイ政府にとって重要な課題となるでしょう。
さらに、タイと中国の関係には、人権問題も絡んでいます。特にウイグル人に関する問題は、国際的な注目を集めています。2015年、タイ政府はウイグル人難民を含む約100人を中国に強制送還しました。この行動は、中国政府からの圧力に応じたものとされ、国際社会からは大きな批判を受けました。ウイグル人は、中国の新疆ウイグル自治区に住むイスラム教徒の民族であり、彼らは人権侵害や宗教的抑圧の影響を受けて国外に逃れる人々が多いのです。
タイの強制送還は、国際的な人権団体や活動家からの注目を集めており、ウイグル人の送還後にどのような扱いを受けるかについては、深刻な懸念が存在します。タイ政府は、国家の安全や外交関係を考慮しながら、国際的な人権基準とのバランスを取らなければなりません。このような状況は、タイ政府にとって非常に難しいジレンマを生んでいます。
また、ウイグル人に対する強制送還の問題は、タイ国内でも議論を呼んでいます。人権問題に敏感な国際社会からの圧力が高まる中で、タイ政府は経済的利益と国際的な人権基準との調整を図る必要があります。これは、タイの国際的な評価にも影響を与える重要な要素となるでしょう。
結論として、タイ政府と中国共産党との関係は、経済的な結びつきと文化交流の強化によって深化していますが、人権問題や国の主権に関する懸念も内包しています。特にウイグル人に関する問題は、国際的な批判を受ける要因となっており、タイ政府は経済的利益と人権問題のバランスを取る必要があります。今後、両国の関係がどのように進展するかは、これらの要因が大きく影響することでしょう。タイ政府は、国際的な人権基準を尊重しつつ、経済成長を促進するために、慎重な政策を進めていくことが求められています。
権力の影:ハンター・バイデン恩赦の真実
バイデン大統領が息子ハンター・バイデンに恩赦を与える決定を下したことは、極めて問題視されるべき事案です。ハンターは過去に薬物乱用や税金の不正申告を含む複数の犯罪に関与しており、その行動は法の厳正さと公正性に対する疑問を呼び起こしています。特に、彼はコカインの使用や薬物に関連する違法行為を繰り返しており、これらは単なる個人的な問題に留まらない深刻な犯罪です。
また、ハンターは2014年にウクライナの天然ガス会社ブリスマの役員に就任しました。この時、彼の父であるジョー・バイデンはアメリカの副大統領としてウクライナ問題を担当しており、ハンターの役職はウクライナにおけるロビー活動において重要な役割を果たしたと考えられています。
さらに、ハンターはウクライナを経由せずにロシアと欧州を結ぶ「ノルドストリーム2」パイプラインの建設に対するウクライナの妨害工作にも関与していた可能性があり、この状況は米国政界がウクライナの利権に深く関与していることを示唆しています。
このような背景から、バイデン大統領が身内に特別な扱いを与えることは、一般市民との公平性を根本から損なう行為であり、法の下の平等という基本原則を著しく侵害するものです。米国において、恩赦は一度実施されると通常は元に戻すことができず、特定の犯罪に対する法的な免除を与えるものです。恩赦は大統領や州知事が権限を持って行うものであり、与えられた後にその決定を覆すことは困難です。ただし、特定の条件下では法律や手続きが関与する場合もあり、無条件に永遠に免責されるわけではありません。しかし、恩赦が適用された個人が再度犯罪を犯した場合には、別の法的手続きが適用されることになります。
こうした状況において、バイデン大統領の恩赦は政治的特権を利用した不正を助長する危険な前例を築くものです。特に、権力者が自らの利益のために法を曲げることが許されるなら、一般市民は司法制度に対する信頼を失い、法の適用に対する不満が高まることでしょう。このような事態は、公正な社会の実現を妨げ、民主主義の根幹を揺るがす恐れがあります。
バイデン政権は国民からの信頼を得るために、法の支配を厳守し、公平性を保つ責任がありますが、この恩赦によってその信頼性を大きく損なう結果となることは明らかです。国民が求めるのは、公正かつ平等に法が適用される社会であり、特権的な恩恵が与えられることではありません。このような状況が続く限り、一般市民は法の下での公平性を感じることがますます難しくなるでしょう。
ガザ停戦合意、その背景と意義
ガザ地区は長期にわたる紛争の影響を受け、深刻な人道的危機に直面しています。戦闘によって多くの命が失われ、インフラはほぼ壊滅的な状態に陥っています。このような状況を受けて、イスラエルとハマスの間で停戦合意が成立したことは、地域の安定に向けた重要な一歩といえるでしょう。
・停戦合意の背景ガザ地区における紛争は、永きにわたる複雑な歴史の中で生じたもので、特にイスラエルとパレスチナの対立は解決が難しい状況を生んでいます。2023年から2024年にかけての戦闘は特に激化し、多くの民間人が犠牲になりました。このような背景の中で、停戦合意は避けられない選択肢となりました。
特に注目すべきは、トランプ次期米大統領の影響力です。彼の政権移行チームが仲介に参加し、トランプ氏自身が「人質が解放されなければハマスに地獄の報いを受けさせる」と強く警告したことが、停戦合意成立に向けた大きな圧力となりました。このようなトランプ氏の発言が、合意の成立を後押ししたのです。
また、ハマスを取り巻く環境も変化しました。最高幹部の相次ぐ殺害や、親イラン民兵組織ヒズボラがイスラエルとの停戦に応じたこと、さらにシリアのアサド政権の崩壊も、ハマスに対する圧力を強める要因となりました。
・停戦合意の内容成立した停戦合意には、重要なポイントが盛り込まれています。まず、ハマスが拉致した人質の一部を解放し、イスラエル側も収監しているパレスチナ人を釈放することが約束されています。
特に注目されるのは、2025年1月19日を目途に最初の人質が帰還する可能性が示されている点です。この合意は、双方にとっての重要な譲歩であり、今後の関係改善のための第一歩となることが期待されています。
・恒久化の重要性停戦合意の恒久化は、持続可能な平和を実現するための基盤となります。過去には、停戦合意が短命で終わるケースが多く、信頼関係の構築が不可欠です。
ガザ地区では、合意成立後も攻撃が続いており、信頼関係を損なう恐れがあります。国際社会、特に米国や欧州諸国がこの合意の履行を支持し、監視する役割を果たすことで、合意の実効性を高めることが求められます。
・人道的支援の必要性停戦合意の実施により、ガザ地区の人道的状況の改善が期待されます。国連やNGOは、ガザの人々に対する支援を強化する必要があり、医療、食料、安全な水、避難所など、基本的なニーズに応えるための支援が急務です。停戦が実現することで、これらの支援活動が円滑に行われ、地域の復興にもつながるでしょう。
・三段階の人質解放プロセス停戦合意に基づく人質解放は三段階で計画されています。第一段階では、ハマスが女性、高齢者、負傷者を含む33人の人質を解放し、同時にイスラエル側はパレスチナ人を釈放する約束をしています。
第二段階では、残りの人質が解放され、イスラエル軍の完全撤退も予定されています。
最後の第三段階では、人質の遺体の引き渡しが行われ、ガザ地区の再建に向けた取り組みが進められることが期待されています。このプロセス全体が、恒久的な停戦に向けた道筋を示すものとなる事を祈るだけです。
・合意の意義と残された課題三段階の人質解放は恒久的な停戦への重要なステップですが、実現可能性には依然として不透明さが残ります。合意発表後もガザ地区での攻撃が続いており、情勢の変化に常に注意を払う必要があります。また、停戦合意が持続可能であるためには、双方のコミットメントが不可欠です。信頼関係を築くためには、透明性のあるコミュニケーションと互いの立場を尊重する姿勢が求められます。
ガザの停戦合意は地域の平和と安定に向けた重要な一歩であり、特にトランプ氏の強い影響力がその成立に寄与しました。国際的な支援と協力が不可欠であり、この合意が持続可能な平和の実現に向けた基盤となることを期待しつつ、今後の展開に注目する必要があります。地域の人々が平和な未来を享受できるよう、国際社会が一丸となって支援していくことが求められています。
孔鉉佑元駐日中国大使との対話が暴く人権侵害の真実
※当時記した、蔵出しコラムです。
日中関係において、人権侵害問題が重要な議題となるべきなのですが、私が直接受けた、孔鉉佑元駐日中国大使の発言は、この課題解決課題解決は愚か、議論の俎上にすら登らない、まだまだ遠い道のりがあると覚悟させるものでした。
彼は、2021年4月13日に自民党本部で行われた会合で、中国共産党による、チベット、ウイグル、南モンゴルにへの深刻な人権侵害に対する私の指摘に対して
「そんな事実はない」「その話は中国では茶番と言われている」「笑い話になっている」
と発言しました。参加者の多くは、このやりとりに凍り付いていたことを今でも覚えています。
孔大使の発言は、単なる外交的なやり取りを超え、日中関係の複雑さとその根底にある感情を浮き彫りにするものでした。この発言が示すのは、単に中国政府の立場を防衛するためのものであり、彼は、世界が中国の人権侵害を批判することに対し、「茶番」と表現することで、世界的見解を軽視する姿勢を示しました。このような発言は、国際社会における中国のイメージに影響を与えるだけでなく、日中関係の将来にも影を落とすものです。
・懸念と中国の反論私は長年にわたり、中国の人権侵害に関して多くの懸念を抱いてきました。特に、ウイグルやチベットにおける人権侵害の問題は、日本国内でも大きな関心を集めており、国際的な批判も高まっています。孔大使はこの点について、具体的な事例を挙げながら反論し、中国側は国民の幸福と安全を第一に考えた政策を実施していると嘘を繰り返しました。
彼の主張は、中国政府の政策が実際に国民の生活を向上させるものであるという立場を取るものであり、対話を通じて中国の立場を理解してもらう努力が必要だと訴えました。このように、孔大使は相手国に対する理解を求める一方で、自国の立場を強く主張する姿勢を見せ、全く議論にならないのです。
・人権尊重への具体的な努力?!孔大使は、中国における人権の尊重についても具体的な事例を挙げました。彼は、中国憲法に基づく人権保護の原則を説明し、政治的、経済的、社会的、文化的権利を包括的に推進するための努力について述べました。その中で、国民の幸福感を向上させるための取り組みがなされていると強調しました。
しかし、国際社会での評価は全く好意的ではありません。中国の人権侵害に対する疑念は根強く、多くの国からの批判の対象となっています。孔大使の発言は、これらの問題に対する中国政府の立場を強化するものでありながら、同時に国際的な信頼を損なう危険性も孕んでいます。
・新疆問題への見解と実情新疆ウイグル自治区問題は、国際的な批判が高まる中で、特に注目されています。孔大使は、この問題について「誤解や偏見が根底にある」と指摘し、新疆の実情を理解するためには、「あなたが直接訪問することが必要だ。おそらくあなたはそんな事実が全くないことを認識し愕然とするでしょう」と口にしたのです。
彼は、実際に現地を見て感じることで、真実を知ることができると述べ、訪問を通じて誤解を解く重要性を強調しました。しかし、そんな場所を見せてくれる筈もありません。行くだけ無駄なことです。以前、欧米の報道関係者を、「ここは平和で豊かなところだ」と記事を書かせるため、新疆に招聘したこともあったと記憶しています。
この発言は、国際社会に対する中国のメッセージでもあります。新疆への訪問を勧めることは、国際的には人権侵害の事実を否定するための一環として受け取られることが多く、批判を招く要因ともなっています。
・相互尊重と協力が必要だが、、、日中関係の健全な発展には、相互尊重の精神に基づく対話が不可欠です。孔大使は、意見の食い違いを乗り越えるためには、双方が誠意を持ってコミュニケーションを図ることが重要であり、共通の理解を深めることが求められると述べました。この考え方は、国際的な関係においても普遍的な原則であり、特に歴史的課題を持つ日中両国においては、より一層の重要性を持ちます。
しかし、それを一番実行していないのは、中国共産党自身なのです。
現実を無視した政治家の軽はずみな発言がもたらす混乱
※高橋洋一先生のご指摘とご主張を、私なりの理解でリライトしました。
政治家の発言が現実から離れていることは、しばしば問題視されています。掲げる数値目標は、実現可能性に乏しいことが多いためです。最近の例として、石破総理が提案した2020年代の最低賃金1500円引き上げ構想があります。これに対して、高橋洋一氏が鋭い指摘を行っています。
高橋氏によれば、現在の最低賃金は1055円であり、これを2020年代の終わりまでの5年間で毎年7.4%ずつ引き上げれば1500円に到達できるとのことです。しかし、過去40年間の最低賃金の平均上昇率は2.7%に過ぎず、最高でも6.9%だったそうです。つまり、7.4%の5年連続上昇は、これまでに前例がない非現実的な数値なのです。
それにもかかわらず、石破総理はあえてこの高い目標を掲げました。高橋氏は、その背景に政治的な思惑があると指摘しています。つまり、労働組合との交渉の前に世論を先行させ、自身に有利な立場を築こうとしているのです。
実際、政治家の発言は往々にして現実離れしたものになりがちです。数値目標を提示する際も、実現可能性よりも目を引く数字を好む傾向があります。安倍政権時代にも同様の事例がありました。当時、安倍首相は毎年3%の最低賃金引き上げを公言していましたが、実際の経済指標からすれば、そこまでの上昇は困難だったはずです。
それでも、安倍首相の発言は世論の関心を集めました。労働組合も、政治家のこうした姿勢に便乗し、より高い引き上げ要求を掲げるようになりました。結果として、実際の最低賃金の上昇率は、安倍首相の公言した3%には遠く及ばないものの、それでも一定の引き上げが実現したのです。
高橋氏は、このような政治家の手法を批判的に捉えています。数値目標の提示が、現実的な経済指標に基づいているわけではなく、むしろ政治的な意図に基づいていると指摘しています。つまり、政治家は有権者の関心を集めるために、あえて現実離れした高い数値目標を掲げているのです。
そして高橋氏は、こうした手法では、本来の目的である最低賃金の着実な引き上げに結びつかないと警鐘を鳴らしています。なぜなら、提示された目標が現実離れしていれば、それを実現するための具体的な道筋が見えづらくなるからです。
高橋氏が代替案として提案しているのは、いわゆる "Small Success" アプローチです。つまり、徐々に目標を引き上げていく方法です。一気に高い目標を掲げるのではなく、まずは現実的な数値目標を立て、それを着実に実現していくのです。そうすることで、目標の信頼性が高まり、関係者全員がそれに向けて取り組むようになるとのことです。
過去の実績を見れば、この提案の妥当性は理解できます。40年間で最高6.9%の上昇率しか記録されていない最低賃金を、一気に7.4%の5年連続上昇させるのはほとんど不可能に近いでしょう。しかし、小刻みな引き上げであれば、確実に前進できるはずです。
もちろん、小さな成功を積み重ねていくアプローチにも一定の課題はあるかもしれません。目標が低すぎれば、関係者の意欲を削ぐ恐れがあります。ただ、高橋氏の指摘する通り、現実離れした高い目標を掲げるよりは、確実に前に進めるはずです。
政治家の発言が信頼に値しないのは、まさにこの点にあります。数値目標の提示が、現実的な経済指標に基づいているわけではなく、むしろ政治的な意図に基づいているのです。有権者の関心を集めるために、あえて高い数値を掲げます。しかし、それが実現可能性に乏しければ、結局のところ空手形に過ぎないのです。
こうした政治家の姿勢に対し、高橋氏は強い警鐘を鳴らしています。確かに目を引く数値目標を掲げれば、一時的に注目を集めることはできます。しかし、それが現実離れしたものであれば、結局のところ信頼を失うことにもなりかねません。
政治家には、有権者の期待に応えるために、現実的な目標設定と着実な実行が求められます。数値目標の提示は、単なるアピールではなく、確実な実現可能性に裏付けられたものでなければなりません。そうでなければ、せっかくの政策提言も、実を結ばないまま終わってしまうでしょう。
米国大使館でウイグル人の「命の証言」を聞いた!- 沈黙を守り続ける日本政府の姿勢を問う
ウイグル人の人権侵害を看過できない~日本政府に求められる迅速な対応と国際社会への働きかけ~
近年、ウイグル自治区における中国政府による少数民族への弾圧が深刻化しております。拘束、強制収容、強制労働など、ウイグル人に対する人権侵害の実態が明らかになりつつあります。しかしながら、日本政府はこうした問題に対して十分な対応を取ってこなかったのが現状です。一日も早い事実認定と、国際社会への働きかけが求められます。
先日、私は米国大使館の招きを受け、ウイグル人コミュニティの方々との意見交換の場に参加する機会を得ました。そこで、ウイグル人の悲惨な現状を生の声から聞くことができました。
映画上映では、これまでにない生々しい映像が公開されました。中国当局によるウイグル人への弾圧の実態が、まさに目の当たりにされたのであります。18歳の時、父親が突然中国当局に拘束され、終身刑となったウイグル人の切々たる訴えや、強制収容所で過酷な労働に従事させられている様子など、耐え難い光景が次々と流れていったのです。
また、現地での証言では、ウイグル人コミュニティが世界各地に散らばりながらも、中国の監視下にあり、いつ拘束されるかわからない危険な状況に置かれていることが明らかになりました。家族が人質に取られるリスクを背負いながら、自らのアイデンティティを必死に守ろうとする姿は、まさに胸が痛むものです。
特に問題なのは、こうした強制収容所で生産された製品が、世界中に流通しているという事実であります。太陽光パネルの原料となるシリコンなどは、ウイグル人の過酷な労働の末に生み出されているのであります。こうした人権侵害の上に成り立つ製品を、私たちは日常的に使用しているのです。因みに、これらの収益は、全て中国共産党の資金になっていくのです。強制労働が、監視統制国家維持に展開されるだけでなく、共産党の資金になるこの悪循環をどこかで止めなければなりません。
米国ではウイグル人権法が制定され、こうした製品の輸入を禁止する措置が取られております。しかしながら、日本ではまだ事実認定すらできていないのが現状であります。人権侵害の実態を直視し、速やかに対応を取る必要があると考えます。
以前、私は中国大使に直接ウイグルの人権問題を指摘したことがありますが、大使は「そんなことはない」と一蹴し、ウイグルに招待して視察するよう提案してきたのであります。まさに、隠蔽と欺瞞の姿勢が露骨に表れているのであります。
一方で、今回の米国大使館での意見交換会の開催は、ウイグル問題に対する米国政府の姿勢の表れだと言えるでしょう。欧州議会でも、ウイグル人権法の可決など、積極的な取り組みがなされているのであります。しかしながら、日本政府は依然として事実認定すらできていないのが現状であります。国会で何度も決議案が提出されてきたにもかかわらず、いまだ成立していないのが実情です。
チベット、南モンゴルなど、他の少数民族に対する弾圧にも目を向ける必要があると考えます。これらの問題に対して、日本政府は沈黙を守り続けてきたのであります。一方で、在日コミュニティの方々は、常に監視と危険にさらされながらも、必死に自らのアイデンティティを守り抜こうとしているのであります。彼らの姿に、私たち日本人が当たり前に享受している自由と平和の尊さを、改めて思い知らされるのです。
日本には、これらの問題に本腰を入れて取り組む義務があると考えます。一日も早く事実関係を明らかにし、国際社会に向けて強い発信をする必要があるでしょう。そして、弾圧を受ける少数民族の方々を、首相官邸に招き入れ、直接お話を伺うことが何より重要だと思われます。
もはや、傍観者でいることはできません。一日も早い行動が求められているのであります。日本政府には、ウイグル人をはじめとする少数民族の人権を守るための迅速な対応を強く求めたいと思います。
あの日の記憶 ~阪神淡路大震災30年を振り返る~
平成7年1月17日、午前5時46分。あの日、私は愛知県日進市の地下鉄・赤池駅付近に住んでおりました。その時、大きな地震に襲われたのです。地震の揺れは非常に激しく、まるで大型トラックが溝に落ちたような大きな音がしたのを今でも鮮明に覚えています。テレビをつけても、特に大きな被害はないように見えましたが、ラジオを聞くと、時間が経過するにつれて神戸が大変なことになっているらしいと知ったのです。
慌てて会社に向かいますと、テレビの映像には、神戸から立ち上る大量の煙が映し出されておりました。地獄を見るような光景だったのです。同僚の奥様が神戸出身ということで、親しい近所の赤ちゃんが亡くなったという話を聞き、心を痛めたものです。当時の太いブラウン管テレビが、部屋中を飛び回るほどの大きな揺れだったと涙を流しながら話をしていたことを、今でも鮮明に覚えております。そして、勤めていた明治生命のビルが倒壊し、カーテンがバラバラに垂れ下がっている写真が残っているのを思い出すのです。
震災後、保険の営業職員たちは1年半もの間、全ての契約者を1軒1軒丁寧に訪問しました。当時は地図データが消失してしまい手元になく、彼らは顧客の位置を頭の中に記憶しながら、きめ細かなアフターフォローを行ったのです。私自身も長年、生命保険の営業に携わってきましたが、生命保険は万が一の時に大きな力となるものだと、身をもって感じてきたのであります。
阪神淡路大震災のような大災害時に、保険が被災者を支える大きな力となったことは事実です。一方で、当時の被災状況は本当に悲惨なものであったのですが、日本人の強さと地域コミュニティの絆によって、見事な復興を遂げたのです。
私は、あの日の記憶を忘れることはできません。あの地震の揺れ、同僚たちの悲しみ、保険会社の迅速な対応。そして何より、日本人の強さと絆に心を打たれました。30年経った今でも、あの日の出来事は私の胸に刻まれています。
亡くなられた6434人の方々のご冥福を改めてお祈り申し上げます。